手湿疹とは?主な症状

手湿疹は、日常生活の中で多くの人が悩まされる皮膚トラブルのひとつです。
ここでは、手湿疹の概要と主な症状について詳しく解説します。
手湿疹とは
手湿疹とは、
「手荒れ」「主婦湿疹」「進行性指掌角皮症」とも表現され、
手に赤みやかゆみなどの炎症症状が生じた状態を言います。洗剤や水、乾燥、摩擦などの外的刺激により皮膚のバリア機能が低下することで、手湿疹が起こりやすくなります。
初期段階では乾燥や軽いかゆみが見られ、放置すると赤みやひび割れなどの症状に進行することも少なくありません。
特に、化学物質を含む薬剤を扱う美容師や、炊事で水を扱う調理師、手を頻回に洗う介護職や保育士などの職業の方に多く見られます。また、家事や育児で水仕事が多い方も発症しやすい傾向があります。
症状を悪化させないためには、日々の生活の中で皮膚の保護と回復を意識することが重要です。
手湿疹の症状
手湿疹の主な症状は、
かゆみ、痛み、赤み(紅斑)、熱感、皮膚の乾燥による粉ふき(鱗屑・落屑)、ひび割れ(亀裂)、そして小さな水ぶくれ(水疱)などがあります。
症状の現れ方や重症度は人によって異なりますが、大きく分けて「カサカサタイプ」と「ジュクジュクタイプ」の2種類に分類されます。
カサカサタイプは、皮膚が乾燥して皮が剥がれたり、ひび割れを起こしたりするのが特徴です。特に冬場や乾燥しやすい環境で悪化しやすく、手を動かすたびに痛みを感じることもあります。
一方、
ジュクジュクタイプは、皮膚全体が赤くなり小さな水ぶくれができるのが特徴です。かゆみが強く、かいてしまうことで皮膚がさらに傷つくリスクもあります。
目次へ
手湿疹の原因
手湿疹は、日常生活で触れるさまざまな物質が原因で発症します。
洗剤やシャンプー、紙・布・金属といった職業上の接触物質、さらには頻繁な手洗いやアルコール消毒など、原因は多岐にわたります。
手は外部刺激を受けやすい部位のひとつであり、どんなに小さな刺激でも、繰り返し触れることで炎症を起こしやすくなります。
また、手は皮脂を分泌する皮脂腺が少ないため、もともと乾燥しやすい部位です。その代わりに、皮膚の表面を守る角層が厚くなることで、外部刺激から手を保護しています。
しかし、水仕事や摩擦、刺激の強い洗剤の使用などによってバリア機能が低下すると、皮膚がカサつき、かゆみや赤みが現れます。悪化するとひび割れや炎症を引き起こすこともあります。
さらに、アトピー性皮膚炎やアレルギー体質の方は、皮膚のバリア機能がもともと弱いため、こうした刺激に対して反応しやすく、慢性的な手湿疹を繰り返すことが多い傾向にあります。
目次へ
手湿疹と混同されやすい疾患

手に症状が出る皮膚疾患は多く、手湿疹と似た症状を示すものも少なくありません。
ここでは、手湿疹と間違われやすい代表的な疾患を紹介します。
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
手のひらや足の裏に小さな膿をもったぶつぶつ(膿疱)が繰り返し現れる病気です。強いかゆみや痛みを伴うこともあり、膿が乾くと皮膚がめくれるように剥がれていきます。
扁
桃炎や歯周炎などの感染症、喫煙、金属アレルギーなどが関係していると考えられています。慢性的に再発を繰り返すのが特徴です。
汗疱(かんぽう)
初夏など汗をかきやすい時期に多く見られ、手のひらや足の裏に小さな水ぶくれ(水疱)ができる疾患です。症状が進むと水ぶくれが大きくなったり皮膚がめくれたりして、かゆみが強くなります。
汗の排出異常が関与しており、一見手湿疹に似ていますが、発症の時期や経過が異なります。
手白癬(てはくせん)
手白癬とは、手にできる「水虫」の一種で、白癬菌(はくせんきん)」というカビが手の皮膚の角層に感染して起こります。そして、かゆみや皮むけ、水ぶくれなどを引き起こします。
手湿疹との主な違いは、
かゆみが比較的軽く、赤みが少ないことがあげられます。
乾癬(かんせん)
赤い発疹の上に白い鱗のような角質(銀白色鱗屑)が重なる角化異常の疾患です。手以外にも肘や膝、頭皮などにも症状が出ます。
かゆみを伴う場合もあり、乾燥や刺激で悪化しやすい点で手湿疹と混同されることがあります。
疥癬(かいせん)
ヒゼンダニ(疥癬虫)というダニが皮膚内に入り込むことで強いかゆみを引き起こす感染症です。夜中にかゆみが強く出るのが特徴で、
指の間や手首などに赤い小さな発疹が現れます。
目次へ
手湿疹になった際の対処法
カサカサタイプの手湿疹を悪化させないための基本は保湿をすることです。水仕事や手洗いの後は、すぐに保湿クリームや軟膏を塗り、皮膚のうるおいを保つことで症状の悪化を防ぎます。
かゆみが強い場合は、ステロイド外用薬の使用が有効です。炎症やかゆみを抑えることで皮膚の回復を早めるサポートが期待できます。
さらに、皮膚が傷ついたり膿が出ていたりする症状には、抗生物質が配合されたステロイド外用薬を使用するとよいでしょう。
市販薬を選ぶ際には、薬剤師や登録販売者に相談して、症状に合った製品を選ぶことが大切です。自己判断での長期使用は避け、症状がなかなか改善しない場合や繰り返し発症する場合には、皮膚科などの専門医を受診し、原因を特定した上で適切な治療を受けましょう。
目次へ
手湿疹にならないための予防策

手湿疹を防ぐためには、まず「原因物質にできるだけ触れない」ことが重要です。洗剤や掃除用品など、刺激の強い化学物質を扱う際は、必ず手袋を着用して皮膚を保護しましょう。
ただし、ゴム手袋はかぶれの原因になることもあるため、内側に綿の手袋を着けるなどの工夫も効果的です。
次に欠かせないのが保湿を徹底することです。手を洗った後や水仕事の後は、水分をしっかり拭き取ってから保湿剤を塗るようにしましょう。
市販の保湿剤やハンドクリームを選ぶ際は、敏感肌でも使える低刺激性のものや、保湿効果の高い成分が配合された製品がおすすめです。傷やひび割れの症状があるなら、尿素を含むものは刺激を感じることがあるため避けたほうが良いでしょう。
乾燥がひどい場合は、クリームよりも軟膏タイプのほうが保護力に優れているため、皮膚が敏感な方にも適しています。常にハンドクリームや軟膏を携帯し、こまめに保湿・保護する習慣をつけることで、手湿疹の再発や悪化を防ぎ、健やかな手肌を保つことができます。
ハンドクリームの塗り方については、以下の記事で詳しく解説しています。
「【手荒れ対策】ハンドクリームの塗り方やポイントを解説」
目次へ
まとめ
手湿疹は、日常生活の中で誰にでも起こり得る身近な皮膚トラブルです。原因は水仕事や化学物質、乾燥などさまざまですが、日頃から適切なケアを行うことで、症状の発生を防ぎ、悪化を抑えることができます。カサカサタイプの手湿疹が発症した際は、まず保湿を徹底し、必要に応じて市販薬を活用しましょう。
症状が長引く、再発を繰り返す場合は、自己判断せず皮膚科専門医への相談が大切です。普段から手を労わった生活習慣とていねいなケアを心がけていきましょう。
野村皮膚科医院 野村 有子 院長
医学博士。慶應義塾大学医学部卒。横浜市に野村皮膚科医院を開業。
わかりやすい丁寧な指導が評判の関東屈指の人気皮膚科医。
最新の肌診断機器の導入や、アトピー性皮膚炎患者専用モデルルーム、アレルギー対応カフェも併設されている。アトピー性皮膚炎や乾燥性湿疹を中心に、男女を問わず幅広い年代の皮膚疾患の診断、治療を行っている。
目次へ